意思決定の早さ・実行の速さ

「文書・文字の使用」に関連するんだけど、ルーマニア人の意思決定および実行の早さは日本人にしたら驚異的なことがままあります。これは僕の活動環境に依存することかもしれません。もちろん、うだうだやっていることもあります。ここで言いたいのは「いったん動き出したら早い」という意味で捉えてもらえるとうれしいですね。


さて、本題。


意思決定と実行の早さについての遭遇した場面(あくまで例で、後述の理由と明確にリンクしているわけではない)とその理由について考えてみたいと思う。

遭遇した早い場面

採用

実は、この2007年1月2日より、ルーマニア人のエンジニアを雇うことになりました。以前からこの話は聞いていて、面接もしたことがあったので特段驚くに値する内容ではないんですが採用までのスピードが非常に早かったです。


僕が冬休みをもらったのが2006/12/23〜2007/1/7までの二週間でした。この期間には、クリスマス休暇2日と新年休みが入っています。なので、営業日で考えると、僕がいなかったのは7日なんですよね。実は、その間に、面接も済ませ、採用とあいなっていたのでした。でも、実際は7日なんかではなく、もっと短いですよね。2007年1月2日から働いているわけなので。で、計算するとわずか3日で決定です。


日本では考えられなく早くないですか???もちろん、面接は一回だけだし、そういった事務作業が少ないこともあります。が、とにかく早かったです。

コンピュータの調達

県庁内はしばしばPCの調達を行っています。調達というとかっこよく聞こえますが、買っているだけです。はい。ただ、これも早い。カウンターパートが業者に行って見積もりを取ってくると、すぐにもうコンピュータが来ています。コンピュータ自体が来るのは、いろいろあって遅くなるけれど、その遅さを除けば、本当に早いです。

さてその理由を考えてみました。

まぁ、僕のカウンターパートは部長級の人なので、そういう人に接していれば確かに早く見えるのかもしれない。でも、もっと違った意味で早いと考えています。

  1. 責任の確固たる所在
  2. 文書数が少ない
  3. 決定に対する実行力
  4. あいまいさの許容
責任の確固たる所在

何に対して、誰が決断を下すのか?それがはっきりしています。だれそれに意見を聞かないと判断できないというわけではなく、一人が決断を下すように組織化されています(もちろん、広範囲にわたる問題とかは他の人に意見を聞くけれど、日本で他の人に意見を聞くよりも回数が少ない)。


また、任された方はその責務を果たすようしっかりと考えています。そして、任せた側(たいていは上位責任者)は任せた人の意見を詳細に聞くことは少なく、大枠でOKであれば信じて決断(サイン)をくだしています。


その結果、余分なレビューといったことも無く実行までのスピードが早いのではないかと思ってます。


これを書いていて思い出すのは、あるアメリカの大学の授業でのグループによる共同作業。ある課題をクリアするためにグループで課題を検討するときの話。課題は大きいので当然、課題を分割してそれぞれが分割された小課題をやってくる。ここからが違ってくる。各小課題を各人がそれぞれ力を出してやってきたはずだから、特に精査することもなく各人がやってきた小課題を結合することで課題を提出したらしい。このグループには日本人もいて、「なぜ各小課題について議論しないの?」と言ったら「個人が力を尽くしてやってきているのだから、十分なレベルで課題をクリアしているはず」という答えが返ってきたらしい。なんか、この話に似てませんか?特に、各人を信じている点が。


もちろん例外はありますよ。上位責任者が詳細に聞くべきところは聞いてるしね。そして、弊害もときにはあるでしょう。情報共有がなされていないことと、ある内容をより上位に持っていくことができない点。


この2点の課題とスピード・信頼のバランスをうまく保つうまい方法はないものですかね?

文書数が少ない

「文書・文字の使用」でも書いたように議事録も取らないし、日本よりも圧倒的に文書が少ないことも意思決定に至るスピードの早さにつながっていると思います。文書を書くだけ時間はとられるし、特に曖昧模糊としている議論内容であれば、書いてあることが変化する。そういった、無駄がないです。ここルーマニアには。もちろん、文書を書くという意識すら希薄だったりしますが、結果的にスピードに直結してますね。

決定に対する実行力

今の県庁に配属されて、つくづく思うのは、、、


「みんな、つべこべ言わず上位権力者の言うことに、よく従う」


ということです。もちろん、論理的におかしな点や疑問に思うことは下位の人も喋りますよ。ただ、決定に対して感情的に嫌だと感じても従う習性があると見えるのは僕だけでしょうか?その結果、日本とは違って決定がすっきり実行される。この点も早さの秘訣のような気がしています。

あいまいさの許容

これは僕も合意できる内容なんだけど、多少あいまいであっても実行してしまいます。これを計画性の無さと言うか、あいまいさの許容というのかは人によっても違うと思いますね。日本であれば日一日の詳細なタスクを洗い出し、それを実行していくような計画を立てますが、ここルーマニアではそんなことしません。


そして、問題があればその場で修正して対応する。なので、比較的ルーマニアで何かをしようとすると、途中であーだこーだと対応に追われることもしばしばです。そして、日本人感覚からすると「予見できる問題を事前に検討していないから、こうも対応に追われるんだ」と言いたくなりますが、事前にあらゆる角度から未来のリスクを詳細に検討するのがいいかはわかりませんね。


問題に対する全ての正確な情報など入ってこない。そういう前提で物事を進める力。日本人には必要だと思いますね。なので、99.999%詳細に検討して時間を損失するよりは、ルーマニア人にならって、95%検討して、あとはその場でなんとか対応する。こういうのがバランスをとった感覚なのかなって思ってます。


付け加えると、あいまいさが許容できるのは、心の奥底で「どんな状況でも対応できる、なんとかする」という気持ちがあるんだと思います。なので、多少あいまいでも進めるんでしょうね。それに対して、日本人はあいまいさの許容ができない民族です。あいまいなのは恐怖だから事前に詳細に検討しないと気がすまない。そして、チャンスを逸する。